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モリス『社会主義』とソーシャルデザイン(続)
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 そこで、最近のソーシャルデザインの動向ですが、今日まだモリスとの関連が十分つけられてはいないようです。ただ、何といっても「モダンデザインの父」と呼ばれ、その上アーツ&クラフツ運動、さらにバックスとの共著ですが『社会主義』の著作もあるモリスです。モリス再評価に関連して、ぜひソーシャルデザインへの水脈を探っておく必要があるように思います。すでにインテリアやデザインの関係者や団体などでは、モリスとソーシャルデザインに関心を寄せているようですので、問題提起的に述べてみましょう。

 ソーシャルデザインについては、全部眼を通していませんが、何冊か出版されています。教科書的に整理したものもありますが、まだ経験的な事例紹介によるケース研究にとどまっているように思います。むろん興味ある事例研究が多く、実践的な問題解決型の事例紹介が一つの潮流になっているのを強く感じます。とくに先進諸国での社会的・経済的な行き詰まり、政治的混迷の深まりと閉塞感、とりわけ3・11の東日本大震災の復旧・復興の中で、ソーシャルデザインの実践的解決に期待が寄せられているのでしょう。ただ、今それがなぜソーシャルなのか?また、なぜデザインなのか?必ずしも答えは明確ではありません。

 まず、なぜソーシャルか?という点ですが、ソーシャルデザインの定義として、例えば「利益追求ではなく、社会貢献を前提にしたコトやモノのデザイン」といった説明があります。企業の「社会貢献」が強調される風潮が高まっていますが、「社会貢献」を手段にして、利益追求を行う営利企業が多い中で、利潤追求の隠れ蓑に「社会貢献」を利用するのは疑問です。その点では、企業のあり方を明確に定義しておくことが必要であり、多くの紹介されている事例研究が、事実上でしょうがNPOやNGO、協同組合やコミュニティ・ビジネス、ベンチャー企業を挙げているのは正解です。ソーシャルデザインの主体が、営利追求の商業主義の企業では、金権腐敗の政治からも脱却できない。社会的な問題解決にもつながらない、その点はマルクス『資本論』をバックスと読んで社会主義としてデザインを提起したモリスを、是非参考にして欲しいと思います。

 企業は、個人にせよ法人にせよ、投資対象の組織として、営利活動を行ってきた。営利活動は、資本の価値増殖のために行われ、金融にせよ、商業にせよ、産業にせよ、近代社会の資本主義の経済主体だった。しかし、資本主義の行き詰まりの中で、上記のように非営利の企業活動が各国様々な呼称で登場し、ソーシャルビジネス=社会的企業が積極的に活動しています。そして、営利企業では解決できない社会的問題を解決する。ソーシャルビジネスの目的や使命は、営利ではない。ミッションは、社会的問題の解決である。このソーシャルビジネスの社会的活動と結びついてソーシャルデザインの役割が位置付けられるのではないか?

 さらに営利企業に雇用される労働力は、労働力商品を前提とした「雇用労働」であった。雇用労働は「日給」にせよ「月給」、「年俸」にせよ、営利企業が投資する「給与」等として費用化される。しかし、新たに経済主体として登場するソーシャルビジネスは、有償ないし無償のボランティアであり、「協同労働」です。協同労働に基づいた共同体(アソシエ―ション)として、ソーシャルビジネスは社会的に活動機能する。モリスが「農民芸術」を「小芸術」、そして「付随的芸術」としたのは、存在の大小ではないし、位置づけの高低ではなく、「協同労働」の協働すること、アソシエーションの喜びであり、そのミッションの価値だろうと思います。そして、ここにソーシャルデザインが結びついてくる。

 モリスのデザインは、壁紙にせよカーテンのテキスタイルにしても,単体の独立した芸術品ではない。装飾として食堂に飾られ、建築建造物に付随し、しかも庭園のガーデニングと結びつき、台所の食器から料理にいたるまで、アソシエーションのネットワークを構成する。だから、大芸術に対して小芸術だし、実質的芸術に対する付随的芸術と定義されているのでしょう。しかも、『社会主義』では、都市と農村をはじめ、地域の共同体から国際関係までの「グランドデザイン」に及んでいる。そうしたグランドデザインを、一方では社会主義思想の「根源」にまでさかのぼり、他方では近代資本主義経済の自立的運動法則を『資本論』に学びながら、主体的運動の目指すヴィジョンとして具体的に提起したのが、モリスの壮大な『社会主義』のデザインです。プロレタリア独裁の国家社会主義の上からの計画化や、私有財産を国有化による国営企業の骨組みだけの無味乾燥なマルクス・レーニン主義のテーゼではないのです。

 もしソーシャルデザインが、社会問題の解決に向けて「市民の力で社会をより良いものへ作り変える活動はソーシャルデザインと呼ばれ、町作り・環境保護・福祉・ビジネスなど、多くの分野で試みられている」とするならば、モダンデザインの父、ウィリアム・モリスの『社会主義』を参考にしたらどうか?むしろ、ソーシャルデザインの古典として位置づけて見ることをお勧めしたいと思います。
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by kenjitomorris | 2015-01-06 15:21



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