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漱石が購入したモリス
 今や国民的作家とも言える夏目漱石ですが、始めての文部省留学生として、1900年から足掛け3年間ロンドンで生活し、その下宿先の反対側には1984年「ロンドン漱石記念館」も造られています。しかし、彼のロンドン生活は、持病の神経衰弱が悪化し、日本では「漱石発狂す」といった悪い噂も流れました。そのため、文部省からの電命で帰国を促された、とも言われています。しかし、漱石の日記など、確かに一人で留学してストレスが大きかったものの、「発狂」したわけではない。同じ時期に、ドイツ文学の研究でベルリンに留学していた藤代素人が、ロンドンに立ち寄ったときの様子では、「夏目君の片鱗」(『漱石全集』昭和3年7月、第五回配本、月報第5号)などに書かれていますが、単に漱石の持病が「大袈裟に当局者の耳に響いた為」とされています。漱石は心配をかけた素人を、モリスがデザインしたグリーン・ダイニングルームもある現在のヴィクトリア&アルバート・ミュージアム(B&A)の「世界で始めてのミュージアム・レストラン」に案内し、2人の留学生活の無事終了に乾杯したそうです。これらの事情については、すでに2010年4月から5月にかけて、この日記に「漱石とモリスの接点を探る」と題して何度か書きました。ご参照下さい。
 また、そこにも書いて紹介しましたが、漱石の日記だと1901年7月9日、ロンドンの書店街「HolbornニテSwinburne及Morrisヲ買フ」とあります。漱石はモリスを勉強しよう思って、彼の著作を買い込み、その後9月7日、さらに21日の日記では、「Morrisヲ連レテ散歩ス」など、ハイドパークでモリスを読みながら、さらにモリスの工芸作品が沢山ある上記の「B&A」に立ち寄り、グリーン・ダイニングルームで食事をしていた、そんなことが想像できます。そして留学の最後には、心配して立ち寄ってくれた藤代素人と共に乾杯した。そう考えると、神経衰弱で苦しんだことは確かでしょうが、漱石はモリスについて勉強していたし、その成果が、漱石の国民文学として結実したのではないか、漱石のロンドン留学ではモリスの研究も、極めて重要だったのではないかと思います。
 そこで、モリスがロンドンで購入したモリスの本ですが、『漱石全集』第20巻に「漱石山房蔵書目録」があります。それで探しますと、その中の英文学、芸術の部分に3冊ありました。

 1、The Earthly Paradise.London:Longmans,Green&Co.1900
 2、Lectures on Art. Delivered in Support of the Society for the Protection of Ancient       Building, by W.Morris and Others. London:Macmillan&Co. 1882
3 Art and Its Producers, and the Art and Crafts ofToday.London:Longmans&Co.1901  
 
 
 なお、漱石の蔵書は、「漱石文庫」として、東北大学の図書館に集められました。漱石の高弟で、小説『三四郎』のモデルだと言われている小宮豊隆教授が、大学の図書館長だった縁で、貴重本「漱石文庫」として寄贈されたからです。小宮教授は、1924年に東北帝国大学に法文学部ができる時、宇野弘蔵、土居光知とともに創設に参加され、その後図書館長も務められ、「漱石文庫」が設置されるのに尽力されました。
 そこで「漱石文庫」ですが、データベースを検索したら、5点出てきました。しかし、1点は別人のモリスの著作が紛れ込んでいて、4点でした。上記の3点に加えて

 4、Volsunga saga. tr. by E.Magnusson & W.Morris, ed. by H.H.Spar

 以上4点を、「貴重図書閲覧許可書」により、館員の立会いのもと確認、さらに日を改めて「貴重図書撮影許可書」に基づき、指定業者によって、特別に撮影してもらいました。下の写真がそれですが、ほかに写真2枚、さらに漱石の日記の該当箇所の写真も手に入れました。
 賢治の原稿のコピーとともに、仙台・作並の「賢治とモリスの館」のグリーン・ダイニングルームに置きますので、ロンドンの漱石を偲びながらご閲覧ください。


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by kenjitomorris | 2012-09-25 16:09



賢治とモリスの館 - 最新情報
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