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宮沢賢治からのメッセージ:冬季セミナーIN仙台
 宮沢賢治学会イーハトーブセンターが、東日本大震災復興支援の企画として、昨年から盛岡、東京、続いて2月18日(土)仙台文学館で開催されました。賢治学会の会員でもあり、企画に協力して、お手伝いさせてもらいました。会場と共催が「仙台文学館」だったこと、また昨年3月11日の震災から1年を迎える時期でもあったと思います、事前申し込みを途中でお断りしたのに、それでも会場が溢れるほどの盛況でした。準備した資料も無くなり、主催者は嬉しい悲鳴でした。震災からの復興に、「雨ニモマケズ、風ニモマケズ」の賢治精神をもう一度思い起こし、心の拠り所を求める参加者の熱い思いを強く感じました。大成功だったと思います。
 学会の会員として、講演の講師を引き受け「大震災と文明の大転換:賢治精神に学ぶ」で約1時間話しました。今度の大震災が自分の人生のあり方を問い直す「文明の転換」であること、福島原発事故により原子力VS自然力の選択を迫られた今、「きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむ」(注文の多い料理店:序)賢治の訴えを聞き、津波に浚われたマイカーや家電製品の瓦礫の山を見せ付けられ「一日ニ玄米四合ト少シノ野菜ヲタベ」て生きていく脱「大量生産―大量消費」の生活の見直し、さらに工業化社会の機械文明の科学技術立国から、『農民芸術概論綱要』で賢治の訴えた「近代科学」に置換される宗教・芸術の「アーツ&クラフツ運動」、そして羅須地人協会で賢治の教えを受けた伊藤与蔵さんの「賢治聞書」を紹介しました。そして、W・モリスの労働観「傍を楽にする」に基づく「芸術をもてあの灰いろの労働を燃せ」の賢治の「イーハトーブ」思想の訴えを語りました。賢治先生に褒めてもらえるかどうか?200名を越える聴衆の皆さんは、一生懸命聴いて下さいました。ご清聴に感謝です。
 その後、NPO法人「シニアネット仙台」の朗読グループ「注文の多い料理店」が舞台朗読として賢治の「月夜のでんしんばしら」を朗読しました。ここで朗読が入った理由ですが、じつは昨年の9月21日の賢治祭の日、例年行われている「賢治の里で賢治を読む会」に、朗読グループが参加しました。それを聞いて下さった賢治学会の関係者から、今度の仙台での冬季セミナーの話が出て、協力を依頼されたのです。朗読グループも協力に賛成、さらに朗読出演も決まりました。そんな事情があって、今回のセミナーでは、盛岡や東京に無かった「月夜のでんしんばしら」朗読が、プログラムに入った次第です。ですから、私の講演の中でも、少し「月夜のでんしんばしら」についても、触れてみましたので書き留めておきましょう。
 「銀河鉄道の夜」を始め、賢治は鉄道や電気の話を書いています。とくに「月夜のでんしんばしら」は、鉄道よりも電気、そして電信柱を軍隊に擬え、「電信柱の軍隊は」の軍歌とともに話が進んで行きます。賢治の童話には珍しく、軍隊調です。なぜ、賢治は鉄道と電気、そして軍隊を素材に選んだのか?
 19世紀末、近代社会の工業化は、重化学工業化の時代を迎えました。第2次産業革命とも言われる産業の高度化です。この産業基盤になったのが、エネルギーとしては電気エネルギーであり、鉄道による輸送網の発展でした。それらが鉄と石炭による工業の高度化を支えることになりました。しかし、それで迎えた20世紀は、2度に及ぶ世界大戦、そしてロシア革命など、「戦争と革命の世紀」となったのです。熱戦と冷戦、革命戦争が繰り返され、原子爆弾の開発、そして原子力の平和利用の原発が続いたのです。
 鉄道と電気の社会的な利用拡大が、じつは「戦争と革命」と結びついていた。宮沢賢治の心象風景には、電気と鉄道が軍歌の合唱とともに、「月夜のでんしんばしら」の行進になって、「電気の大将」の号令の大声が響いたのです。ロシア革命の直後、レーニンはソ連共産党の集会で「共産主義とは労兵ソビエットと全国の電化である」と演説し、全土に電気網を張り巡らして中央集権的なクレムリン支配のソ連型社会主義を建設しました。そして、冷戦時代には、米ソの核軍拡とともに、原子力発電のネットワーク拡大となり、スリーマイル島の事故に続いて、チェルノブイリの原発事故とともに、ソ連は崩壊したのです。
 大号令の「電気の大将」が、突然の列車の到来に驚き慌てる様子は、何か3・11の大津波の襲来、そして福島第一原発の爆発を連想させるものがあります。賢治精神は、電気や鉄道の高度工業化の明るい利便性、快適性の生活面ではなく、「電信柱の軍隊」を登場させて、近代社会の工業化の裏面に鋭い眼差しを送った、賢治の創造力、洞察力は大変なものだと思います。こうした賢治精神を朗読で伝えきれたかどうか?賢治先生、どうだったでしょうか?


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by kenjitomorris | 2012-02-20 21:01



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