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洪水
<情報コーナー>
 9月22-23日、花巻で毎年開かれる「宮沢賢治学会」に出席した。花巻の地に毎年、沢山の会員が集まること、いろいろな角度からの研究の豊富さ、会員の層がじつに厚い。他の多くの学会が空洞化し、マンネリ化し、会員の偏りに苦労している近年の状況では、「賢治学会」は珍しいケースだろう。
 懇親会の2次会で、いろいろな話題が耳に入ってきた。地元の方々から、過日の台風の被害状況が語られた。すでに新幹線の車窓からも、北上川が暴れた跡が歴然としていて、心配だったが、そのとうりだった。賢治が好んだ大沢温泉の露天風呂が冠水、「下ノ畑」も水浸し、被害は大きいようだ。
 『賢治とモリスの環境芸術―芸術をもてあの灰色の労働を燃せ―』(時潮社刊)ようやく校了、印刷製本に入りました。A5版234ページ、100点を越すカラー写真・図版などが入ります。菊池正さん編、伊藤与蔵『賢治聞書』、羅須地人協会2世の座談会など、「農民芸術概論」と羅須地人協会の活動を中心に、W・モリスから賢治への生活芸術・環境芸術の流れを考察しました。
 本に挟み込む栞、一足先に印刷されたので、「宮沢賢治学会」でも配布させてもらいました。 内容は、 赤田秀子「自然の中から新しい物語を見つけた人―モリスの鳥と賢治の鳥と―」千葉祐悦校長「賢治先生と花巻農業高校」中村光紀館長「啄木・賢治青春館のこと」吉田六太郎前会長「宮沢賢治の会のこと」吉見正信いわて教育文化研究所長「花壇設計から肥料設計へ」
 それぞれ興味深い論稿です。ご覧下さい。
<研究ノート>
 今年、我々の訪問の後、6月末から7月にかけて、イギリス中部、とくにコッツウォールズ地方は、何年かぶりの洪水に見舞われた。テムズ河の上流の流域が、水害で酷くやられたし、宿泊したB・BのMill Deen Gardenも、床上浸水だった。
 日本列島でも、九州の台風の被害が大きかったが、東北は少なくて済んでいた。ところが9月になって、東北北部の河川が増水、北上川も大暴れだった。賢治ゆかりの「下ノ畑」も完全に冠水してしまったらしい。たしかに北上川が増水すれば、真っ先に水につかりそうな場所である。洪水常襲地帯だろう。
 伊藤与蔵さんの「聞書」にも、「下ノ畑」は、何箇所か出てくる。はじめの「賢治先生と私」の部分にも、「先生が働いていた畑というのは、一町歩近くもあったと思います。畑は川流れ(川の増水の度ごとよく流される場所)のところでしたので、大部分は砂地で作物はあまりよく育たないところでした。近所の人たちでさえ耕作することを好まなかったようです。そういうところで天気の良い時は毎日出て働き、その暇をみては原稿を直したり、詩を書いたりなさるのですから肉体的にも精神的にも大変なことだったと思います。」
 羅須地人協会の桜の別荘での賢治の生活ぶりが伺われて面白い。晴耕雨読ならぬ、昼耕夜筆らしいが、かなり広い面積の畑だったようだ。河川敷だろうから、土質はそんなに悪いわけではないだろうが、「川流れ」の可能性は大きい。水田は無理だろうし、賢治が「下ノ畑」に選んだ理由は何だったのか?優等地ではなく、相対的に劣等な土地で、農民の苦労を体験しようとしたか、農業技術の実験をしようとしたか?
 「川流れ」の土地を耕作し、水害について考えようとしていたことも考えられる。環境保全は防災対策と一体でなければなるまい。北上川の水害と、英コッツウオlルズ地方の水害、2つの水害が、この夏「賢治とモリスの環境芸術」にも重大な問題提起になったのではないか。
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by kenjitomorris | 2007-09-30 14:24
W・モリスと斎藤実
<情報コーナー>
 今年も花巻で「宮沢賢治学会」が開催されるので、9月22日、23日出席の予定です。
そのときまでに大内秀明著『賢治とW・モリスの環境芸術』(時潮社)の刊行を計画していたが、残念ながら間に合いません。申し訳ありませんが、10月にずれ込みそうです。ただ、赤田秀子さん、花巻農業高校の校長先生などの寄稿で、立派な「栞」が出来ました。予告をかねて配布できそうです。ご期待下さい。
<研究ノート>
 モリスが新婚生活を始めたのが、現在もロンドン郊外にある「レッドハウス」(赤い家)だった。すでにナショナルナル・トラストの管理の下、歴史建造物として保存され、訪問客も多い。とくに、設計がフィリップ・ウェッブ、内装がバーン=ジョーンズ、ロセッティなど、ラファエル前派の仲間たちの共同制作だった。そのため内外から建築関係者の訪問が多いようだ。
 最近、とくに日本人の訪問客が増加しているらしい。「ハウス」の管理者が、日本語の解説者を置くことを考えていた位だ。増加の理由はいろいろあるだろう。今年になり朝日新聞が「奇想遺産」として紹介(2月18日)、さらに日本経済新聞が7月1日の日曜から、「ラファエル前派の精神」のタイトルで、毎週4回に亘って取り上げた。その都度、モリスに触れていたが、特に第4回は「近代の葛藤」として、彼の「芸術と労働の一致を志向」する芸術思想を大きく紹介した。まさに、モリスの「芸術と労働は同一」の信念こそ、賢治の「農民芸術概論」に受け継がれたアート&クラフトの思想なのだ。「芸術をもて あの灰色の労働を燃せ」
 日経新聞は、残念ながらモリスから賢治への芸術思想の継承には触れていなかった。しかし、こんなことが紹介されている。「斎藤実。海軍の軍人。朝鮮総督などを経て昭和初期に首相を務めた。レッドハウスを訪れたのは海軍少佐だった1897年(明治30年)。----モリス一家が去って30年たっていたが、家のあちこちに残る装飾を眺めながら、斉藤たちはモリス談義に花を咲かせただろう。」当時の住人が「英国ジャパン・ソサエティーの創立メンバーで、その招きに応じたようだ」と説明されている。
 ただ1897年は、モリスが死んだ年、賢治誕生の年である。斉藤のレッドハウス訪問には、もう少し何か理由もありそうだが「今から百年前、ひそかにモリスの精神と交差した日本人」が斎藤実だったことは事実なのだ。我々の訪問の際も、日本人だからであろう、解説者がわざわざ一階ホールのガラス戸に書いてある「斎藤実」のサイン―もう一人「足立--」の名もあったような気がした―を指して、注意を促してくれた。海軍の軍人が、なぜモリスを、彼が死んだ年に訪問したか?後の宰相の心に、モリスとレッドハウスが、どのように刻み込まれたか?
 斉藤実は、原敬に続く岩手県出身の首相だ。それも水沢(現、奥州市)に生まれ育った。水沢と言えば種山ヶ原、そこから沢山の賢治作品が生まれ、「風の又三郎」のブロンズ像も建つ。斎藤実が朝鮮総督、そして首相を勤めたころ、賢治が花巻でモリスを学び「農民芸術概論」を「羅須地人協会」で講義していたのだ。岩手の自然とともに、モリスが賢治に近づいてきた。「風の又三郎」のブロンズ像の傍らに立つモリス!
 日経新聞は書いている。「斉藤は首相辞任後、内大臣を務めていた1936年(昭和11年)、2・26事件で殺害される。クーデターによる社会体制の革新を夢見る青年将校たちに、英米寄りの現状維持派の
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首領と見なされたのが原因だった。」賢治が花巻で死んで3年後のことである。
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by kenjitomorris | 2007-09-19 22:18



賢治とモリスの館 - 最新情報
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