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盛岡「宮沢賢治の花木展」を観る
<情報コーナー>
 5月17日、盛岡市中の橋通りの「もりおか啄木・賢治青春館」で4月12日から6月10日まで開催の「宮沢賢治の花木展~みちのくの春~」を観に出掛けた。日頃お世話になっている盛岡の吉田矩彦さんが、賢治の文学作品に出てくる岩手に自生する植物の写真を展示したものだ。美しい写真と賢治の作品からの引用文の紹介など、興味深い企画だ。環境芸術としての賢冶文学の理解には役立つだろう。同時に、吉見正信さんの「賢治の花壇設計をたどる」も展示されている。
<研究ノート>
 「花木展」のチラシにも説明されているが、賢治の作品は自然と人間との対話である。「自然を歌って、賢治ほどの大きさを表した詩人は他にいないとも言われています。」その点では、人間中心のルネサンス芸術との違いかもしれない。モリスとともに、「環境芸術」と呼ぶ所以でもある。モリスは、イタリア・ルネサンスには批判的だったらしい。
 モリスの壁紙、装飾品のデザインも、ほとんどすべてが花、木、鳥である。そして、最初にデザインした壁紙は、「赤い家」の庭のバラ、ラチスに這い上がる蔓バラであり、そこに鳥と蝶が舞う模様だった。モリスが英ガーデニングの元祖のように扱われるのも、そうしたデザインの素材に由来する事が大きいと思う。
 モリスのデザインなどに登場する植物についての書物では、『ウィリアム・モリスの庭』がある。J・ハミルトンなど3人の著書で、1998年に出版、鶴田静訳もある。モリスは、テキスタイル・デザイナーとして、インテリアが中心のようだが、「赤い家」に見られるように、建物と周囲のエクステリアにも配慮し、全体の統一を求めていた。だから花壇や庭造りは、モリスの生活芸術にとって不可欠な部分、構成要素であり、だから環境芸術になる。
 『ウィリアム・モリスの庭』は、前半「庭―まさしくその家屋敷を作るもの」に続き、「モリスとその庭」を論じた後、後半は「ウィリアム・モリスの植物」と題して、「モリスがデザインに含め、散文、詩、手紙に書き、あるいは彼の庭の一部だったことが知られている、自生植物」を、図鑑のように紹介している。その数50種に及び、ハニーサックル、アカンサス、蝦夷蛇イチゴ、などは当然含められている。何種類かは、わが「館」にも生えている。
 さらに興味深いことだが、今回の「花木展」ではっきりしたが、賢治の植物とモリスの植物の共通性である。日本で言えば「山野草」であろう、自生植物を重視していたモリス、やはり「地人芸術」として植物と語り、花壇を設計した賢治、しかも日本の岩手県と英コッツウォルズは、緯度も余り変わらない島国の自然を共有しているのだ。
 植物の花だけではない。鳥をはじめ動物達も、あらためて賢治とモリスの環境芸術の心で観る必要があると思う。
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by kenjitomorris | 2007-05-20 12:49
英国歌曲を聴く
<情報コーナー>
 GWも終わった。昨年と違い、今年は「賢治とモリス」の館、テレビの放映も無かったので、訪問客は殺到しなかった。落ち着いて「館」で楽しんで頂けたようだ。それでも東京など、遠来の訪問客が増えているし、「グリーン・ダイニング・ルーム」で食事を楽しまれるリピーターの方が多くなっている。嬉しいことだが、結構多忙だった。
 ただ、肝心のカタクリの花、GWの期間咲いていると予想したが、開花が早かっただけ、花の終わりも早かった。予想が狂い、申し訳ないと思う。自然は、人間の思うようにはいかないようだ。
 5月5日、仙台のヤマハ・ホールで、テノールの辻裕久さん、ピアノ伴奏、なかにし あかね さんの英国歌曲を聴く会が開かれた。今年は第11回目になり、約100名ほどの小ホールだが、満員だった。この発表会、東京や神戸などでも開かれているが、今年は宮城学院の先生でもある、なかにし さんのご縁もあり、仙台でも開催となった。このリサイタルのパンフに、わが「賢治とモリスの館」のイングリッシュ・ローズとともに、お二人の仲の良い写真が飾られた。
そんなわけで、最近の「館」、音楽との縁を深めている。歌声サロンのシニアの歌声が木霊し、歌曲のリサイタルのお手伝いもする。賢治の「セロ弾きのゴーシュ」を庭のコテージに飾ったが、環境芸術に音楽は欠かせない。
<研究ノート>
 テノールの辻さん、とても美しい声で英国歌曲を歌ったが、グリーンや柳・ウイロウなど、わが「館」を髣髴とさせるような歌詞が沢山でてきて、とても楽しかった。また、なかにし さんの作曲で歌われた曲に、クリスティーナ・ロゼッティの作詞のものが含まれていた。”Spring Quiet ”「ひそやかな春」である。
 リサイタル終了後、なかにし さんに質問したら、C・ロゼッティはW・モリスと関係の深い件のD・G・ロゼッティの妹だとのことだ。早速、頂いた宮城学院女子大学研究論文集の抜き刷り「Spring Quiet 歌曲集<ひそやかな春>」を読んだ。作曲に関連した部分は、専門外でほとんど理解不能だった。しかし、C・ロゼッティに関連して、こんな説明があった。
 「ロマン派は、音楽分野での大雑把な時代把握であり、英文学上はロマンティクからヴィクトリアン詩と言うべきであろう、19世紀前後の詩である。この時代、イギリスは、産業革命と、ダーウィンの<種の起源>によるキリスト教世界の大激震と、公害や階級社会の行き詰まりや、世界の文化遺産の強引とも言える発掘や輸入や、大英帝国の華やかなりし繁栄にと、活発に動いていた。その中で、詩人達は、社会の変革に揉まれ、価値観の変化に揉まれながら、ことばを綴り続けた。それらのことばは、20世紀の初頭のイギリス音楽の再台頭の時代に作曲家達の心をとらえ、歌曲の全盛期を生む。芸術文化、ことに音楽において、控えめで、とかく大陸からの輸入に頼りがちだったイギリスが、誇りをもって自国の芸術を主張し始めた、その牽引力になったと言っても過言ではない。」
 モリスも詩人である。絵も描いたし、D・G・ロゼッティとともに、画家として「ラファエル前派」に属する。モリスの夫人となったジェイン・バーデンを巡ってのロゼッティのスキャンダルに、モリスが苦しんだ話は有名だ。そこに複雑な人間模様が織り込まれていた。
 「ロンドンのロゼッティ家には本国イタリアへの憂国心にあふれるイタリア人達が集い、また、長じては、詩人であり画家である兄ダンテ・ゲイブリエル・ロゼッティ(1828-1882)やその友人達、すなわちラファエル前派の芸術家達が集まった。
 クリスティーナは数奇な運命を辿った女性である。彼女の人生には、異郷の地での冒険譚もなく、時代の流れに翻弄されためくるめく変貌もない。華やかなりしヴィクトリア朝時代にあって、ただひたすら、孤独な屋根裏部屋にこもって自分と向かい合い、自己に打ち克つことを自らに課し続けた。兄が、詩人として画家として華々しく社会に飛び出し活動する陰で、クリスティーナはひっそりと、驚くべき強靭さと謹厳さをもって、精神の旅路を歩んでいたのである。」
 論文を読みながら、よみがえった記憶でジャン・マーシュの『ラファエル前派画集 女』を開いてみた。兄により描かれた「マリアの少女時代」、J・コリンソンによる彼女の肖像画、いずれも「驚くべき強靭さと謹厳さ」を感じさせる。そして、もう一度”Spring Quiet"『ひそやかな春』を読んだ。
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by kenjitomorris | 2007-05-10 12:10



賢治とモリスの館 - 最新情報
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