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「猫の事務所」の朗読
<情報コーナー>
 ①予定が遅れ、お待たせしていた拙著『賢治とモリスの環境芸術』(時潮社刊)、ようやく出来上がりました。表紙には、朝のNHKテレビでお馴染みだった「どんと晴れ」の小岩井牧場の一本桜を背景に、賢治とモリスの写真、サブタイトル「芸術をもてあの灰色の労働を燃せ」も印刷しました。そろそろ店頭に並びます。
 100枚に及ぶ写真を入れました。そのため厚手の上質の紙を使用し、かなりボリューム感があります。その代わり定価が高めになってしまい申し訳ありません。資料的価値を評価していただければ幸いです。
 ブログご覧の皆さん、また「賢治とモリスの館」にご来訪の方には、著者買い上げの分からお分けする事も可能です。ご連絡下さい。
 ②紅葉の季節ですが、作並も少し遅れ気味です。ただ、ここへ来て寒くなりましたので、山の上の方から、ドンドン色付いています。11月の初めには、美しい紅色に染め上がると思います。ご期待下さい。
 ③今、来訪者の名簿を整理しております。いよいよ5年目に入りますし、上記の本も出版されましたので、ニュースレターでもお届けしようかと思います。ご協力下さい。
<研究ノート>
 NPO「シニアネット仙台」の朗読グループ「注文の多い料理店」に参加しているが、先月から宮沢賢治「猫の事務所」を読んでいる。「猫の事務所」については、そのモデルとされる旧稗貫郡役所が復元され、10月1日には「『早池峰と賢治』展示館」がオープンした。展示館には是非訪問したいと思っている。
 賢治の童話のほとんどがそうだが、この「猫の事務所」も、猫を使った擬人法で書かれている。事務所のトップ事務長は黒猫、一番書記・白猫、二番書記・虎猫、三番書記・三毛猫、そして一番下が四番書記・釜猫である。サブタイトルには、「ある小さな官ガに関する幻想」とあるから、地方の行政事務所になるだろう。その末端官僚組織の職位階層制の実態が生々しく描き出されている。行政組織のイジメの構造であり、さらに言えば汚職、偽造、隠蔽の構造でもある。読んでいると、何となく年金のデータ隠しの仕組みを連想してしまう。実に今日的な童話だ。
 行政の官僚組織は、職位職階制だ。公務員は民間企業の単なる雇用ではない。権力による任命であり、拝命である。上から下へのピラミッド型の組織であり、上意下達のトップダウン型の命令なのだ。トップの黒猫から、一番書記の白猫、そして虎猫、三毛猫、末端の釜猫までの序列である。「猫の歴史と地理を調べる」とは言え、戸籍係か年金の記録係のようなルーチンな仕事だ。お役所仕事だが、それがもったいぶって行われる。
 階層序列の中の仕事の縄張り争い、それが末端の釜猫へのいじめになって、職場が陰鬱な空気に包まれてしまう。この陰鬱な職場の雰囲気の中で交わされる猫の会話を、いかに朗読で表現するか!なかなか難しいところだ。その雰囲気を感じとるためにも、花巻市大迫町にある急稗貫郡役所に出かけてみたいのだ。
 賢治は盛岡高等農林の研究生の頃、郡役所の依頼で土質調査のため、大迫の役所を度々訪れた。そのときのことが作品になっている。「土性調査慰労宴」と言う草稿もあるそうだが,地元の人々が酒の飲めない賢治もてなす様子も詳細に書いてある。宴会を手放しで喜んで受けられない賢治の心情が、「猫の事務所」にも伺われる。
 最後の締めくくりは、事務所に「いかめしい獅子の金いろの頭」が現れ、事務所の廃止、解散が命じられる。無駄な仕事の整理、「そんなことで地理も歴史も要ったはなしでない」、と言う厳命の一言で廃止だ。この「天の声」による行政改革について、賢治は読者に、こう問題提起する。「ぼくは半分獅子に同感です」、半分は反対なんだろうか?
「猫の事務所」の朗読_a0063220_17291660.jpg

by kenjitomorris | 2007-10-24 21:55
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賢治とモリスの館 - 最新情報
by kenjitomorris
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