奥羽山脈の山に抱かれた作並温泉は,今年とくに雪が深い。その山里の「賢治とモリスの館」は、目下雪のため閉館、静かに冬眠中である。それでも訪れて頂いた訪問客から、静かに雪に眠る館の近影が届いているので、ご披露したい。暦の上では立春、でもまだ雪が降る山里だが、日差しには少しずつ春を感ずる。待望の「かたくりの花」の開花は何時だろう?冬が早く来ただけ、春の早い訪れを期待したいのだが。
沢山の庭の山野草、秋に植えた球根など、雪の下で春を待っているはずだが、気にかかるのが賢治の木「銀どろ」である。去年の秋、岩手の高校の先生から数本の木を頂き、記念に植えてある。まだ幼木であり、秋に落葉して枯れた様になっていたが、雪の下でどうしているか。雪が消え、春とともに元気に芽吹くといいのだが、さらにまたO氏に頂いた賢治愛好の「翁草」の苗とともに心配なのだ。 賢治の木「銀どろ」だが、北上市の「黒沢尻南高校」の跡地に、その謂れを記した碑がある。碑文の縦書きを横書きにするが、全文を紹介しよう。 この銀どろは昭和三年五月 本校移転落成の記念に宮沢賢治か ら贈られたものである ゆかりも深いこの樹の年輪を歴史の中に刻 み樹下に碑を建てて永く記念し 世界全体の幸福を願った賢治の精 神に触れて 諸子がすこやかに成長を遂げられるように 心から念 願するものである 昭和参八年五月五日 校長 目時 隆太郎 歴史のある「黒沢尻南高校」は、岩手県の学校統廃合で廃校になった。少子高齢化による岩手の厳しい現実である。今から78年前の宮沢賢治の教育への志を受け継ぐ意味で、「賢治とモリスの館」に「銀どろ」の子供を植えた次第である。賢治の願いが、少しでも理解を広め、実現されるよう、来訪者の皆様にもお願いしたい。 「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない 宮沢賢治 農民芸術概論綱要 」
by kenjitomorris
| 2006-02-12 15:36
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